Ceramic moon Plastic stars

大体漫画とかアニメの感想を書いてます。こう、妄想が溢れそうになった時の受け皿としても活用。

徹頭徹尾優しくて暖かい

疲れまくってる身には染みる…。

 

「映画すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ」を観てきました。
相変わらず姪っ子達がいるとこういう映画観に行く時助かる……一口もポップコーンくれませんでしたが。

 

ともあれ映画ですが、すみっコぐらしの登場キャラクター(すみっコ)達が暮らす街にまほうつかいがやってくる話です。
「例によって」…という切り出しが実は使えないな、と今更ながら。
というのも、そもそもすみっコ達の性格やキャラクターはこれまでに描写されていても、どんな風に生活していて何を食べているのか、とかそういう情報はほとんどなかったわけです。

 

…だからこそ、この映画ではすみっコ達の日常が描かれている所に意味があります。
「あ。皆、同じところに住んでるわけじゃないんだ」とか「いつも部屋のすみっこに座ってるわけでもないんだ」とか。
何より驚いたのは、「すみっコ達の世界には他に住人がいる」という点。
考えてみれば当たり前の話ではありますが、すみっコ達は「メジャーであったり当たり前である所にはいられない」はみ出した存在なので、「そうじゃない」普通の人(キャラクター)達がいるわけで…。…そのキャラクター達がモノクロとはいえ描写されていることに何となく「おぉ…」と思ったのでした。

 

閑話休題
そんなわけで今作は映画版ゲストキャラクターのまほうつかいのコ・ふぁいぶがやってくることによる出来事を主題にした…ようにみせて、実はすみっコ達がどんな風に暮らしているのか、何を夢(目標)にしているのかにクローズアップした作品になっています。
日常描写に重きが置かれているので、メインキャラ以外のすみっコも大勢出演。
とかげ(本物)は知ってましたが、かわうそとか知らなかったなぁ…。個人的に「やま」が大好きなんですよね。なんでキャラクターとして成立しているのか意味不明過ぎて(笑)
街の光景も穏やかで、ゆっくりと時間が流れているのが分かります。楽しそうなところばかり。

 

そんな世界にまほうつかいの世界からやってくるまほうつかい達。
上手く魔法が使えない「ふぁいぶ」はコンプレックスを抱えながらも頑張ってる。
ふぁいぶとすみっコ達のいわばコンプレックスからくる夢、行動原理を軸に話が進みます。

 

…何気にえっぐい事が起き、キャラクターが崩壊。真面目に考えたら笑い話じゃないんですが…ぺんぎん?に眉毛が描かれてるだけで笑えちゃうわけで、この辺、キャラクターの持ってる力(イメージ)って凄い。
他の作品ならこの辺の葛藤・問題解決だけでかなりの時間を費やすと思うのですが、そこは作品のイメージというか、鑑賞者の年齢層に合わせて?サクッと解決しちゃったのが、個人的には少し物足りなく感じるところ。逆にあっさり解決したことが面白くあったりもして…あれ? どっちやねん?

 

いずれにせよ、可愛く優しく、丁寧に作られた映画でした。
75分くらいで観れるという事もあり、ストレスフリー。疲れた時に観るとオススメかもしれません。

 

 

で。これ完全に余談なのですが。

 

…多分、どうしても前作「とびだす絵本とひみつのコ」と比較されてしまうと思います。
正直、胸に刺さるのは間違いなく前作。物語が切なさに振り切ってて、泣かざるを得ないところがありました。
しかし、あえて言うなら。
前作は完全に映画版・劇場版として全力で作成されており、そのために「すみっコぐらしにおける異世界」を作成して描かれています。だからそこに出会いと別れ、冒険とワクワク感があって、涙もあった。

 

対して、本作は(繰り返しになりますが)すみっコ達の日常にこそ重きが置かれているため、どうしても非日常的な驚きは少なく、感情の揺さぶりは弱いと言わざるを得ません。…しかし、その分、キャラクターの深い掘り起しが出来ていると思うのです。

 

いわばこれは、(他作品を引き合いに出すのは良くないですが)テレビ版ドラえもんと劇場版ドラえもんの違い。
テレビ版でコメディ、ギャグに笑い、劇場版でのび太の勇気とジャイアンの男気に泣く。そんな感じ。
テレビ版が無いすみっコぐらしですから、食べて、遊んで、寝る、いつものすみっコ達を描いている事にこそこの作品の価値があるんじゃないかな、と。

 


何て言うのかなぁ…最近の「泣き」が入ってこそ名作、って風潮は、作品を正しく評価してるとは言えないんじゃないかなぁって思ってて。