Ceramic moon Plastic stars

大体漫画とかアニメの感想を書いてます。こう、妄想が溢れそうになった時の受け皿としても活用。

あー、好きだー、これー

11/11、「すずめの戸締まり」観てきました。仕事終わりに直。仕事を残して。お陰で明日は家で持ち帰り作業。だが悔いはない。…いやちょっとある…仕事いやだ…。

 

閑話休題

 

約2時間、中だるみなしに観れた、というか、かなりワクワクしながら観てました。

 

そう、ワクワク。
事前情報はほとんど仕入れてなかったのですが、いかんせんこの作品は露出が高く、避けていてもそれなりに情報が入ってきてしまうものでして。更に「君の名は」「天気の子」を観てると、何となく「こんな感じかな」っていう予測をしてしまっていたのですが、そこにワクワクするものはそんなになかったのです。

しかし、見事にワクワクしてしまった。ロードムービーとして知らない場所を行く楽しさ、新しい出会いに心騒がせてしまっていました。
割とテンポよく物語は進んでいくのですが、その割に訪れる場所の印象はしっかりしてて、海があって、畑があって、人がたくさんいて…風景と空気をシンプル、かつ分かりやすく伝わってきます。
道、海、山、線路、歩く、電車に乗る、車、天気の移り変わり…。あぁなるほど、旅って変化を追っていく過程でもあるんだな、なんて今更思ったりもして。
その中にはもちろん、行く先々で交わる暖かい人々の姿も含まれていて、人間関係が広がっていく感じ、端的に言って「仲良くなっていく」感じが凄く楽しくてー。

 

……前作の、リアルで冷たい街の景色とは大違いだな?

 

本音をいうと、甘い世界だな、と思ったりもします。
そんなに人は親切じゃないし、無防備に信頼するのは危険だぞ、と。
そもぞも着の身着のままで地元を飛び出した女子高生が、そんなにスムーズに旅をできるわけがー…と我が心中のめんどくさい部分が囁くのも承知しています。

が。エンタメとして、移動するだけで一苦労、雨を避ける宿も暖かな食事もない……なんていうリアルを突き付けられたいわけじゃないので、コレデイイノダ
準備万端、計画も完璧。事前の根回しも済んでて誰にも迷惑かけません…なんて旅、バラエティー番組を観れば済んじゃうし。

それに、万が一ならそういう旅ができちゃう可能性だってあるわけじゃない? ねぇ(ギャンブラー思考)。
「できっこない」なんてのは、想像力不足と固定観念に囚われたロマンのない人のセリフですよ、と。

 

更にこの辺の無茶っぷりに触れるならば、高校生の身空で、っていうのがまた良い。無理・無謀…それが分かっていても、やっちゃう、前に進んじゃうっていうのはホントにリスキーで冒険なのですが、それが若さ。
保護されている身であることを自覚しているから、何かしらの呵責や息苦しさを感じているからこそ、そこを抜け出す解放感と罪悪感。
作中でも何度か触れられてますが、家出を思わせるのが、こう、あの頃の記憶を呼び起こすというかー。


…いや、私、家出したことないですけどもね(小市民ゆえの憧れ的な)。


そんなわけで、基本設定の時点で高評価なわけですが。

 


それにも増して鈴芽が可愛い!
キャラデザはもちろん良いのですが、とにかく表情と動きが豊かで、見ていて飽きない。コメディもシリアスもこなし、素直に感情を表現するから感情移入があっという間です。声と台詞も引っかかるところがなくて凄く自然。…えっ? 専業の声優さんじゃないの? うっそぉ…。
また性格も変に捻ってなくて、一生懸命で良い子。…もちろん、闇というか内心はあるのですが、それを含めても魅力的だと感じます。
旅先で出会う知らない人と話す事を苦にしないあたり、陰キャとしては羨ましい限り。
兎に角明るさに溢れていて、誰にも愛される娘、っていう事をひしひしと感じます。

 

……美少女は得だな!!(身も蓋も)
髪型、ちょくちょく変わるのが凄く良いと思いました!!


草太も……ホントいいヤツで悔しい! イケメンのくせに!! えっ、中の人、ジャニ……くそう、良い演技するじゃないか…!!
こう、単に外見が良いってだけじゃなく、目標があって、自分の運命に覚悟もあって、主人公的に自らを頓着しない。
客観的に見れば扱いが不遇だけど、それに立ち向かってちゃんと活躍してるってのが素晴らしい。そりゃあ「人気者」にもなるよね…。
寝相の悪さしか欠点ないのかよぉ…


環さん。
私からすると凄く親近感が沸く年頃の方なんですが、私とは比べ物にならないくらい苦労してるんですよね。
責任感が強くて、真面目で。そりゃあ鈴芽を心配するのもよくわかる。
重いけど(ひどい)。
あと方言に違和感感じなくて凄いなー(いや、地元民じゃないのでホントにこの感じなのかは分かりませんが、演技してる違和感みたいなものはなかったな、と)。


あと芹澤は……男の子はこういうキャラ、好きよね(笑) 大好きだー。
なんというかこう、要領よく立ち回るようでいて、結局貧乏くじ引いちゃう感じ。
色々垣間見える不器用さが好感度上昇させまくりです。
…修理代、幾らかでもみてもらえればいいけれども。


他キャラも皆魅力的でした。
嫌いなキャラというか、どうでもいいっていうキャラは一人もいなかったですね。


ストーリーは大変良かったと思います。
日本神話風の要素を絡めた現代ファンタジーですが、設定が重過ぎて世界観説明に必死になる事なく、あくまでもメインは鈴芽と草太の旅と冒険に焦点を当ててるので、ストレスなく観ていられます。
かつ、誰もが内に抱えている葛藤や思いも盛り込んで、それが自然と旅の最中に差し込まれてくる。
どの要素も無理にねじ込んでる感じがないのがいいですね。

 

どうしたって大変な事になる話なのに、所々にちゃんとコメディ要素を入れて笑いを取る辺りも上手い。
何気に鈴芽と草太の掛け合いがテンポよく、かつそれぞれのキャラが出てて楽しいんですよねぇ。
椅子が走り出す、って時点ですでに面白いのですけれども(笑(そしてそれに鈴芽がツッコむ、という漫才要素も)

また、物語的に廃墟・人がいなくなった場所を回る事になるわけですが、それと対比するように人が生活している場所・人がたくさんいる場所でのシーンを描くことで、より廃墟の寂しさが強まり…かつての息遣いを感じさせるのも良かったと思います。

 

そんなこんなで素敵なキャラが登場するロードムービー、という体裁で非常に面白かったと思います。
話題だから、とかではなく、皆に是非観ていただきたい名作ですね。

 

 


…「あの事」を正面から捉え、盛り込み、ドキュメントではなく作品として語ったという事。これは良いとも悪いとも言えないな、と言うのが本音です。だからそこには触れずに評価をしているつもり。

個人的には誠実さを感じました。
確かにエンタメ・創作として触れる事は非常に怖いものがあると思いますが、しかし事実としてあった事である以上、それを避けているのも不自然です。
創作者として、この時代に生きる人として、しっかりと向き合った事、私は驚きと共に素晴らしいと思いました。


ちゃんとお別れをして、鍵をかけて、出かける。

それは全ての物事について真摯に向き合う、という事にも繋がるのじゃないかな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ。


冒頭の小すずめからしてエ□…いやいや、うん、ただ事じゃない雰囲気でしたが。
なんというか、あの光景で瞬時に311を思わせる演出、演技力、状況…ちょっと凄かったですね(と同時に、「ホントにこれやって大丈夫…?」という不安が過りましたけれども)。

結果的に杞憂というか…「あの悲劇に見舞われていない」人間からすると、いたずらに悲劇や美談として描くのではなく、ただ真実・事実として受け止め、それを創作として的確に昇華・出力していたな、と感じました。
…正直、小すずめのお母さんに会いたい、っていう必死の慟哭は…そりゃあ刺さりまくるんですよ。
単に死んでしまったかもしれない、というだけじゃなく、「おうちがなくなったから、居場所が分からない」っていうのは、子供ながらに感じる、そしてリアルさを想起させる表現で。
それについて、正しいとも間違っているとも答えず、ただ生きていける、生きていこうと告げるのは今を生きる者としての精一杯の答えであり、励ましだろうと思いました(…ある意味、それが限界ともいえるかもしれませんが)。


いやそれにしても小すずめロリ可愛かったなぁ!!(ひどい

なんかもう、全般的にちっちゃい子の可愛さが出てたというか、演技が凄い。
お母さん大好き感が凄かったんですよねぇ……だからこそ哀しいけども。
ドアを締める前の、こちらを伺う感じ、とかホント…尊い

 

廃墟がたくさん描かれているわけですけれども、なんというかどこも栄枯盛衰を感じるというか、物寂しさが胸に染み入ってきます。
かつては暮らしていた人があり、希望があり、喜びがあったのだろうな…と思うと、何とも言えない気分に。
その思いが大地を鎮める、という言葉は何とも深いと思うのですよね。
もちろん、科学的根拠がある話ではないのですが、今はいない人々の思いであったり、暮らしに思いを馳せる、無駄にはしないというのは、「今から」を生きていく上で結構大事なことなんじゃないか、と。

そういう意味で、東北の風景を見て「ここ、綺麗だったんだ」という鈴芽のセリフには消化しきれない気持ちと、当事者ではない芹澤との違いを感じて、短いながらに胸が締め付けられる感じでしたね。


あ、そうそう。
これ結局、「神様が勘違い片思いして巻き起こした大騒動」だったんでは?
…と思ったりもしたけれど、多分「すでに起こりかけてた大事件にたまたま巻き込まれた話」っていうのが正しいような。
草太おじいちゃんがサダイジンに「抜けてしまったのですな」と言い、ダイジンは裏扉の場所へ導いていたという事になれば、
ダイジン達にミミズを起こすという悪意はなく、ただ結果として後からその場に居合わせてしまうという状況だったのではないか、と。

…ダイジンを餌付けしてしまったのは、悪女の所業だったという事になるけれど(結果的に)(苦笑

 

あと椅子の機動力すげぇ。人間じゃああはできないぞ。

 

 

というか結局、鈴芽が鬼のように可愛い、ってとこに尽きる!
上述の通りキャラデが良いんだけど、兎に角行動するヒロイン、っていうのが素晴らしい。
走り回って、歯を食いしばり、飛び降りるし、泣きもする。更にちゃんとボロボロになって怪我もする、っていうアグレッシブさが良いんですよ…。我が身を顧みないというか、それだけ一生懸命だって分かるので。
何気に「死ぬのは怖くない!」って言いきっちゃう辺り、キャラクターの作り、特に現代人としてのキャラクターとしてはあまりないよなぁと思ってたんですが…。

なるほど、そういう過去があれば「生きるも死ぬも運次第」って死生観にもなるだろうなぁ。失うものが何もない、って言ってるのと同義なので、環さん愕然ですが。

その彼女が、「生きていたい」って言うのは、大切なものができた、事ここに至ってようやく踏み出せたという事であり、だからこそ小すずめを見送る事が出来たんだなぁ、なんて。

…ダイジンは容赦なくぶっ刺したんで、なかなかドライよね、と思ったりもしたけれど(笑

 

あと、髪の表現へのこだわりがちょっと異常。
なびき方、結わえ方もそうだけど、民宿で布団に横になっている時の枕への広がり方とか。
浴衣姿も含めて色っぽいとは言わないまでも、魅力的に見えてしょうがないわけですよ。
個人的には神戸~東京間の軽い三つ編みが好き。


腹立つけど、ホントに草太イケメンなのよねぇ…。
いや、ツラだけじゃなくてメンタル含めて。そりゃあモテモテにもなるわー。
何気に閉じ師の仕事を「大事な仕事だけど、これだけじゃ食っていけない」っていうのはリアルに感じるんだけど、食っていけないと分かっていても閉じ師を辞めるつもりはない、っていう使命感の強さを感じて感服するしかない。…「大切な仕事は知られない方が良い」というのは少し寂しいけれども。
鈴芽を呼び捨てしない、っていうのもポイント高い。
他人行儀と言えなくもないけれど、あのイケメンボイスで「さん」づけされるのは、なかなか…くるものがあるのではないでしょうかね?(誰に対しての問か)

 

…と、冷静に語れるのも、作中のほとんどを椅子で過ごしててイケメンを見せつけられずに済んでるからかもしれないけれど。

 

とはいえ、ホントに鈴芽と草太の掛け合い、バディ感は凄く好きなので、本編終了後も時々二人で戸締りに行ってると良いよね。
普通に鈴芽のバイタリティとスキルは相棒として有能だと思うのですよ、うん。

 

千果とルミさん、ホント良いキャラ。
良い人過ぎるとは思うんだけど、それを前提にしてもキャラが立っている。
二人とも接客業の人だから、っていうのもあるのかなぁ。

…考えてみたらこの作品って、陰キャ・コミュ障って出てこないな…ツラい。

エンディングでちゃんと芹澤やルミさん、千果のところに立ち寄ってて、良いなって思いました。
「また来るから」をちゃんとやるの、大事。
…あと、服と帽子、ダメにしたことをちゃんと報告したのだろうか…?(芹澤の車の修理代とかも)


というわけで、色々書き殴るくらいには面白いし素晴らしい作品でした。
スピンオフ作られたら是非観たい。
上述の鈴芽と草太が戸締りに日本を回る話。千果やルミさんも再登場、環さんの恋の行方も交えて!!

……草太はまた何か変な家具に変身させられてるかもしれない。