Ceramic moon Plastic stars

大体漫画とかアニメの感想を書いてます。こう、妄想が溢れそうになった時の受け皿としても活用。

「心が叫んでしまう。」

やはり感情の発露というものは胸にくるものがあります。魂がぶつかってくる衝撃があります。

衝突もなく平和にやり過ごすのは確かに省エネで場を乱す事もないけれど、その代わりに自分の立ち位置や存在を確かめられず、見失う―と。

映画「心が叫びたがっているんだ。」を観てきました。
ツイッターのTLで目にするプロモーションや近所のローソンでやってたコラボイベントでその存在は知ってたのですが、わざわざ映画館まで足を運ぶつもりはそこまでなく。評判が良ければ時間がある時にでも観に行くかなぁ、程度の腹積もりでした。

が。
早速観賞してきた たわりん(@y_kannaduki)氏のツイートに導かれ(というか、私への的確な誘導)、あれよあれよとレイトショーを観に行く事になるのでした。
…21:45開演、片道1時間半…連休じゃなかったら流石に車のキーを手に取ろうとは思わなかったなぁ…(苦笑)

というわけで、以下感想。

 

 

とにかく一生懸命さが素晴らしかった。叫ぶ心が胸に刺さりました。

 

―幼い頃、自らの言葉が大切な人を傷つけた。その罪に呪われ、少女は声を失った。

トラウマのために人と話そうとすると腹痛に襲われる少女・順。
それゆえに誰とも交流を持てず、自分の殻に閉じこもる日々を過ごしていた。

そんな彼女が地域交流会の実行委員に選ばれ、否応なしにクラスを取り仕切らなければならなくなる。
当然、消極的な順だったが、ひょんな事から話す事はできなくとも歌う事はできると気づき、ミュージカルを出し物としてやりたいと自ら希望し、主張する。
本当の気持ちを伝えるために―


という、現代の高校を舞台にした青春劇です。
それぞれ思いや悩みを抱えた少年少女が一つの目標に向かって悪戦苦闘するという…骨格だけを見れば、定番中の定番。
若干ファンタジーの要素を盛り込んでる部分が幾らかスパイスというか変化球と言えるでしょうか(それにしたって順の内面描写に過ぎませんが)。
ぶっちゃけて言えば、脚本的には全てが予測の範囲内でどんでん返しの驚きや面白さはありません。

では何がこの作品の魅力足りえるかと言えば…丁寧な登場人物達の描写でしょう。
脚本で奇をてらわず、しっかりと皆の葛藤や思惑を描く事でじわりと締め付けられるような切なさや息苦しさを思い起こされます。
誰もが後悔や不安を抱えていて、上手くいかない日々に眉をひそめている。
そんな空回りしていたたくさんの歯車の中、誰かの小さな歯車がカチリと嵌まる。回り始めた歯車が連なる歯車を巻き込んで、全体が動き出す感じ。
やはり派手さはありませんが、少しずつ少しずつ変わっていく状況にはどこか喜びや楽しさがあります。

そして何より。
順の一生懸命さが本当に愛おしい。
可愛いとか萌えとかそういうのではなく、無力だった少女が変われるかもしれない希望に必死に縋り、そしてがむしゃらに走る姿に胸が熱くなります。
それはもう、今まで叶わなかった事への憧れで、求めてやまない物への羨望で、…一途な恋心で。打算や計算のない、ただひたすら切実に希う純粋な気持ちが眩しく、羨ましい。

それは丁寧かつ詳細に描かれた順の仕草や表情(声がない分、オーバーな首を振る仕草や、手を振る仕草とか)に表れているのですが、事この作品に関しては「声」が強烈に胸を打ちました。
順の「叫び」は力強く、強烈で、彼女の伝えたいという切実さや必死さに満ちています。遠慮も照れもない全力のシャウトは声優力の高さに感嘆せざるを得ません。
同時に、「よく言った!!」というカタルシスすら感じるほどで。

特にクライマックスで順が叫びまくるシーン。これはもうホントに泣けました。涙しながら一生懸命、必死に、これでもかと心を曝け出す姿。
可哀想ではあるのですが、それと同時に良く頑張ったと褒めてあげたくもなり…正直、自分があの場にいたら抱きしめてましたねぇ…。力強さ…理屈ではなく、心で、魂で震えるものがあって。

…私としては、坂上君はあれでよかったと思いました。
「優しい」彼ならば、あの場で順を受け入れていたかもしれませんが、「本当の心を伝えると決めた」彼ならすでに想う人がいる事を伝えるでしょう。それに、多分、あの場で順を受け入れるのは好きだという気持ちよりも同情が強いでしょうしねぇ…。

「知ってたよ」はホントに泣ける…。

大ちゃんのラストも良かった。
徐々に彼の「良いヤツ」っぷりも描かれていきましたし、順に惹かれていく感じも上手く匂わされてました。
…ひょっとして、のレベルですが、坂上君ちに集まった時、葉月と付き合ってた事を問うたのは間接的に坂上君の順への気持ちを探ろうとしてたのかな、と。…だからこそ、教卓をはさんで坂上君に「お前が…それを言うのか…!」と絞り出すシーンは熱いし、胸が締め付けられるものがありますねぇ…。

あと、地味にミュージカルというか劇中歌が好きでした。
順の歌が妙にツボに嵌まった、というのもありますが、坂上君の「歌いきれてない」感じの歌が高校生って感じでいいなぁと。
それからラストの二重歌は素直に美しくて好き(で。今改めてパンフ読んで歌詞見て涙目)。


そんなこんなで、非常に丁寧な良作でした。正直、突き抜けたキャッチーさがないので強烈な話題作にはならないかと思いますが、中身は実に観応えのあるものでした。大満足。
甘酸っぱい青春が観たい人には是非オススメです。

 

ていうか、黒髪ショートでちょこまかしてて、黒ストとか狙い撃ち過ぎんだろうよー?
…しかもデカイ&ちっこいの身長差カップリングとかもうね…!!