Ceramic moon Plastic stars

大体漫画とかアニメの感想を書いてます。こう、妄想が溢れそうになった時の受け皿としても活用。

ゴブリンスレイヤー、雪山へ

ゴブリンスレイヤー GOBLIN'S CROWN」を観てきました。

原作小説5巻、雪山にゴブリンが出たのでゴブリンを退治する話の映画化です。
おおむね原作通りの脚本になっていますので、原作既読の身としては脚本的な面白さよりもどう動かして見せてくれるのか、ってところに期待して劇場へ。

 

十二分に面白かった。

 

…と言いつつ、気になった点を列挙します。

・尺が短い
上映時間60分。集中力が切れる事無くサクッと観れるというのは事実です。しかし、どうしても説明が足りない、必要な演出がされていない、と感じるところがあります。物足りなさではなく、「そういう判断、行動を何でするの?」とモニョってしまう感じ。原作やアニメ履修済みなら問題ないのですが、単独の作品としてみると…うーん?

 

・前半の戦闘シーンがぎこちない
妖精弓手さんは全編通してよく動くしカッコいい。しかしながら、ゴブスレさん・蜥蜴神官が剣を振る際、腕・上半身だけしか動かないのでちょっと迫力がないように思いました。
但し、後半は迫力・スピード感、そして緊張感も満点(シチュエーション的にそうなるとはいえ)。こういうのでいいんだよ、こういうので(何様か)。

 

・活躍しないキャラがいる
いつもの街を離れての冒険なので、牛飼娘や事務員さんはほぼお休み。これはしょうがないですが、ファンの方からすると残念かなぁ、と。…特に剣の乙女は拗ねまくりだろうなぁw

 

そして何より、
・パンフレット販売がない
誤記のため販売を停止、とのことですが…これは残念過ぎる。上述の通り、説明不足な点はどうしてもあるので、そこを補完する意味でもパンフレットは欲しかったところです。
軽く遠征してきている身の上としては(映画館まで片道1時間半)、改めて買いに来るのもなかなか厳しいもので…。


と、この辺のマイナス点を差し引いて、それでも面白かった。

今回、どちらかというとゴブスレさんの策はあまり功を奏していません(色々アクシデントが多くてw)。その分、アクションで大活躍。
「正面から戦うのは苦手だ」と言っていたのが謙遜に思えるほど、剣士としての存在感を発揮していました。ぶっちゃけ超カッコいい。

 

キャラクター間の掛け合い・意思の疎通もスムーズかつ印象的だったと思います。一党の面々が思っている事、目指しているもの。それらが違和感なくやり取りの中で描き出されていたかと。
特に妖精弓手は実に生き生きと場をまわしてくれました。素晴らしい。…酷い目にもあってるしw

 

個人的に、今作で最も重要…というか、ある意味主役だったんじゃないかなぁ、と思うのが令嬢剣士。単なる救出されるヒロイン、ではなく、彼女の希望と挫折、そして再生が詳細に描かれていました。
特に、彼女が味わった絶望感たるや…。正直、「アニメだからこそ」強烈に感じられたと思います。原作の時点では彼女が現状に陥った顛末については(当たり前ですが)文章で表現されているため、その光景は読者の脳裏で構築されるにすぎません。そのため、「エグさ、えげつなさ」が読者の想像力の範疇に限られています。…つまり、想像を超えるような惨劇が劇場の大スクリーンで容赦なく描かれてしまう(念のためですが、直接的な描写はありません)。
これは、ホントにキツイなぁと…。

 

だからこそ、丁寧に、そしてさりげなく描かれる、不器用なゴブスレさんの救済策や差し伸べられる女神官の手、妖精弓手との衝突と理解、鉱人道士の許容、蜥蜴僧侶の諭し…が彼女を少しずつ癒していくのが、私にとっても救いでした。
是非2期でも再登場、活躍してほしいですねぇ。


そんなわけで、非常に楽しめた1時間でした。
少なくとも原作ファンの方は見て損しない作品だと思いますので、是非。

 

 

 

 

 

 

 


ここからネタバレですが。

・令嬢剣士パーティが瓦解していく様子
・令嬢剣士が襲われる状況(仲間の惨状)
・令嬢剣士が受けたアレコレ(直接的な描写はなし)
・これらのトラウマ表現

この辺をがっつり描いているというのが、実にエグいと思うんですよね。
特に孤立無援の雪中で、ゲスなゴブリンに取り囲まれてパニックに陥る様、これはもう展開を知っている人間ですら恐怖を感じるほどでした。

だからこそ、砦でゴブリンに追われるシーンの緊迫感もありますし、雪原で追い回されるシーンのスピード感、そしてそれを捌くゴブリンスレイヤーの頼もしさが出てくるわけでして(小鬼聖騎士と一対一で渡り合う姿、ホントにかっこいい…。)


作品全体を通して描かれている、襲い掛かる不条理や困難を知恵と努力、そして仲間の協力で乗り越えていくカタルシスが描かれていたなぁ、と改めて思うのでした。


ちなみに、ゴブスレさんが鞘を探す姿が大変キュートだったな、とw